先週末、市ヶ谷で日本うつ病センター主催の「若年勤労者の自殺対策支援のためのワークショップ」に参加しました。
備忘録としてポイント抜粋(主観的に関心のある所だけ)
✽「企業におけるメンタルヘルス対策」
🔻産業医は社員50人以上で配置、1000人以上で専属配置
🔻企業側にとって安全配慮義務違反となる2つのポイント
1.予見可能性・・・社員への損害を会社が予測できた
2.結果回避可能性・・・損害を回避する手段が会社にはあった
🔻産業医の役割は、リスクマネジメントや労務健康管理から、働き方改革や健康経営が求められてきている
→健康経営銘柄や、健康経営優良法人というのがある!
→「健康」が企業のブランディングになる
🔻職場のメンタルヘルスケア・・・セルフケア、ラインケア、産業保険スタッフ等によるケア、事業外資源によるケアの四つ
✽「若年労働者の精神疾患による労災」
自死遺族支援をしている弁護士の細川潔さんのお話。近年は明らかに若い方を亡くされた自死遺族からの相談が増えているとのこと。
労災の申請は、もめる場合は5〜10年かかる。労災申請の流れとして、最初は労働基準監督署、そこで認められないときは労働保健審査官へ、そこでもダメなら労働保健審査会、そっからは裁判(地裁、高裁、最高裁)と、六回の段階があるからとのこと。
精神疾患等の労災は長時間労働が分かりやすいが、環境の変化によるものも本来多い。
✽「メンタルヘルス対策としての運動の有効性」
🔻DALY(障害調整生存年)・・・早死にすることによって失われた年数プラス障害を有することによって失われた年数。
そのDALYが、2020年にはうつ病性障害が二位に上がり、2030年には一位になるとの予測。
🔻抗うつ薬と運動の効果は同等のエビデンス(実証)あり。
🔻不安とストレスに対して有酸素運動による効果は曖昧。ヨガは効果あり。
🔻ポジティブメンタルヘルスが近年企業で推奨されている。ワークエンゲージメント(※熱意、活力、没頭して仕事をしている状態)を増進させる。そのワークエンゲージメントを運動によって向上させうる。
✽「もしも『死にたい』と言われたらーーー自殺リスクの評価と対応」・・・松本俊彦先生(国立精神・神経医療研究センター)
1998年から年間自殺者三万人超えが続いていたのが、ここ5年ぐらい減少傾向である。
だが、何がその理由かは分からない。分からないが明らかにあることとして、「自殺」って言いやすくなった。かつては講演等でも入れづらかった。タイトルから外してくれと要請されたことがあった。
ほとんどの自殺アセスメントツールの有効性は、そもそもの自殺者の割合というのが全人口比率として非常に少ないので、疑わしい所がある。その中でも一番有効性が高いものとして上げられるのが、「The Sad Persons scale」と呼ばれるもの。その効果は以下。
・Sex(性別、男性であること)
・Age(高齢者と思春期)
・Depression(うつ病)
・Previous attempt(自殺既図の既往)
・Ethanol(アルコール乱用)
・Rational thinking loss(精神病症状)
・Social support deficit(社会的支援の欠如)
・Organized plan(具体的な自殺の計画)
・No spouse(配偶者がいない)
・Sickness(病気)
防ぎ得なかった自殺の多くは、その人の「死にたい気持ち」に周りが気づかなかったことによって生じている。
希死念慮のある方が支援者から死にたい?と聞かれた場合、ほとんどの人がホッとするという。
自殺を決意した人は援助者を敵と見なす傾向がある。自らの道を妨げるものとして。なのでその意思を明かさないことがある。そのブロックを乗り越えて自殺念虜の評価をしていく工夫が求められる。そのためにストレートに「自殺」という言葉で聞く。
(例)
「自殺考えてる?」
「あなたと同じ状態だったら私も死にたいと思うな」
→死にたい気持ちを援助関係で共有することが非常に大事。つまり、安心して死にたいと言える援助関係を作っていくこと。
※ちなみに私は今日の初回カウンセリングで、「生きていくのイヤになったことがあった」と過去の話の中で出たので、「自殺考えた?」とストレートに聞いたところ、違和感なく濃い話が出てきました。
支援者に求められることとして、「自殺考えてる?」と聞くことの大事さが自殺研修では何度となく言われます。これはWTO(世界保健機構)でも推奨されている標準的な自殺予防の考え方です。
カウンセラーの皆さん、対人支援者の皆さん、自殺を考えているかどうか聞くのはタイミング等考えながら聞く必要はありますが、「ひょっとして終わらせようかななんて思ってる?」みたいな曖昧に聞くのでは意味ありません。ストレートに「死のうと思ってる?」と聞くことによるデメリットは様々な研究の中でないと言われています。遠慮なく聞いてください。ここが一番のポイントです。)
死にたい人は最後の最後まで「死にたい」と「死にたくない」の両価性の状態にある。
※ちなみに終わった後、松本先生にご挨拶して名刺交換しました。
来月、東京社会福祉士会の研修にお招きしてお話頂く予定です。ついでに私も演習担当として登壇します。どなたでも参加可能です。ご関心のある方は是非ご参加ください。
▷「自殺予防ソーシャルワーク研修」東京社会福祉士会
http://www.tokyo-csw.org/content/topLinks/oshirase/02center/2019/0129.html?fbclid=IwAR0JKp5IiwVk6I8dwD6SqImhXk4iqrTMm5bojizDbvp3h_Vg3pQ7H5ERtg4
(参考記事)