今日はうつ病について少し語ります。
うつ病と言うとどんなイメージがありますか?

私のイメージだと、漫画で顔に斜線が入ってるような感じの、どよ~んと重いというか暗くなっているのを思い浮かべます。まるでその人の周囲に暗雲が立ち込めているかのような。

実際には、例えば、背中が曲がってうつむきがちで、言葉はポツポツと喋り、一つ一つの動きが緩慢で、サビた人間ロボットがぎしぎしミシミシと音を立てて動くかのように。

中にはお風呂に入ることもできなくて頭がボサボサ、フケがあったり、眠れなかったり、あるいは寝床から出られなくてずっと寝続けたりする人もいます。

働いている方がこういう状態になった時は、もはや仕事できる状態ではありませんので休職という展開になったり、あるいは自ら退職される方もいらっしゃるかもしれません。

けれども、うつは必ず予兆というものがあります。

それは何か。

うつは一見思いもよらない形で忍び寄ってきます。

なんかちょっと食欲がないなぁとか、残業が続くと体調不良になって、なんかちょっと頭が痛いし肩こるなって、まぁここまでハードな仕事してると体にも出るよねと考える。

あるいは仕事の能率が悪くなっていきます。
ちょっと最近ね、仕事をめいっぱい詰め込んでるからちょっと頭の回転悪くなってるのかな。ちょっと目がチカチカするし、微熱も出てきたなぁと。

そうして内科などの病院に行ったりするのですが、特に原因が見つかるわけでもなく薬とか処方されたりして帰されます。そして、薬で症状が改善されたとしても、あれ?今度はまた別の所の調子がおかしくなってきたなと。

微熱が続いたり、めまいがしたり、お腹痛くなったり。
そしていろんなドクターショッピングを繰り返していきます。

しかし、この時、自分がうつであるなんて考える人はほとんどいません。
ちょっと疲れ溜まってるし、若い頃のようにはいかないなぁ。
ただ、今の会社の状態じゃ、他の日とも休んでない中、自分だけ休むわけにはいかないしなぁ、と。

そこからさらに進んで行くと、次第に仕事の優先順位が付けられなくなって仕事がたまってきます。書いてある文章が読めなくなったり、読みづらくなったり。中には、文字がホントにミミズを這うような感じで読めなくなってくる人も。

そして、明らかに作業スピードが遅くなります。
月曜日が辛くなります。
前は楽しかったことがつまらなくなったり、急に怒ったり。

このレベルになっていくと、もはや休職を考えるべき時でしょう。

しかし現実問題、なかなか仕事が休めなかったりしてどんどん悪化していき、うつが一丁出来上がりになるぐらいまで追い込んで、いきなり会社で倒れたり、ある日起きたら会社に行けなくなったなんてこともあります。

うつというのは、うつになるのと同じぐらいの時間が回復まで必要なんです。だから長引けば長引くほどよろしくない。長引くほど回復には時間がかかるんですね。

本当は早期発見、早期治療が一番いいんですけれども、実際問題、置かれた状況としてそうもいかないことはしばしばあるでしょう。

だいたい、例えば医師の残業時間の上限は一般企業よりもひどいですからね。なのに、患者からは医療過誤の問題や、クレーマー等への対処等々、気持ちの休まる暇がないのかもしれません。

そして、うつは、回復まで時間がかかってしまうだけじゃないんです。

うつは非常に再発率の高い病気です。
今後、同じ程度の負担量以下ですら再発の可能性が出てくる。

うつに対する脆弱性が生じてしまうんですね。
一度うつになってしまうと、閾値(いきち)が弱くなってしまうのかもしれません。

ですから大事な事っていうのは、身体症状が出た時に既にうつを考えることです。ん?内科で異常なし?怪しい?といったように。

周りが気づいてあげることも大事ですね。どうしても本人は自覚がないことが多いですし、たとえ自覚があったとしても我慢してしまう。

だから周囲が、この人いつもより効率悪いな、切れが悪いな、集中力ないな、感情になんか揺れがあるな、そういったことに気づいて指摘してあげることが大事でしょう。

特に管理職にある方は意識しておくべきものでしょう。

うつによる、生産性の損失や、うつ等のメンタルヘルスに伴う企業の損失は、非常に大きいデータがあります。

また、健康経営銘柄というものがあります。
これは、毎年、経済産業省がだいたい20~30社ぐらい選んで、従業員の健康管理を経営的な視点で考えて戦略的に取り組んでいる企業を発表するという仕組みです。

今や、こういったものが企業ブランディングとして大きな意味を持つようになっています。また、場合によっては、うつになった社員の上司が労務管理の責任者としての責任を問われることがあります。

こういったことを、企業のメンタルヘルスについての講演などで話すと、それまで狸寝入りして聞いていたような人がいきなり目をギョロッとして起きて真剣に聞き始めちゃうなんてこともあります。

本人の判断では限界まで頑張ってしまうかもしれないので、面談や、業務負担の軽減、場合によっては保健師や産業医などにつなげることもありかもしれません。

そして、本人も人に頼れなかったり、負担を抱えてしまう人がなりがちですので、自分の傾向をしっかり理解しておくべきではないでしょうか。

(参考記事)
心の病を持つ神経症の心理メカニズム~ウルフの言葉とうつ病の事例より