今日は趣向を変えて、カウンセリングや心理学についてどんな方法や理論があるのかをご紹介します。
学問の中でも、いわゆる近代的な心理学は意外に歴史が浅く、19世紀などに始まりました。19世紀後半からフロイトの精神分析がその後の心理学に大きな影響を及ぼしました。
そして今、21世紀にあっては本当に様々な理論やアプローチが、それこそ雨後の竹の子のように、生み出されています。今日はその中の主なものをご紹介します。
ジークムント・フロイトを創始者とし、最も歴史が古い精神療法。深層心理を探求した。無意識下に抑圧されていた感情などを意識化することで症状の軽減を目指した。精神医学の世界への理論的貢献は大だが、心理療法としての実践的効果は低いと言われている。また、週3、4回で何年にも渡る治療を続けていくため時間的、金銭的負担が大。現在においては一部の精神科医などや団体で行われており、フロイトを源流とする諸心理学として残っているのが実情。
◎来談者中心療法・・・カール・ロジャースによって提唱された療法。非指示的で、カウンセラーは傾聴、共感、反映などによりクライエントの語りを丁寧に聞いていく。カウンセラーの深い聞き返しによりクライエントが自分自身で気づきを得て、成長していく。フォーカシングと呼ばれる技法もある。
アーロン・ベックによって提唱され、エビデンス(治療としての根拠、効果)を重視したもので現在の精神医療分野での主流となりつつある。2010年から医師による保険診療の対象となったが、平成27年現在精神科での実施率は10%に満たない。クライエントを悩ましている認知の歪みに働きかけ、バランスのとれた思考を促していく。厚労省による治療者用マニュアルも出ており、7つのコラムなどのツールもある。マニュアルにおいては面接回数として16~20回ぐらいを想定している。非常に構造化されたもので治療者にとっては簡便で使いやすい印象。一方、マニュアル的な質問でのやり取りに意識を置くことでクライエントに寄り添った面接への視点が抜け落ちかねないのが、医療者側の今後の課題とも言える。
数少ない日本発の心理療法。20世紀初頭に森田正馬によって創設された。対人恐怖症、強迫神経症、赤面症、パニック障害などの不安神経症を対象に、現在ではガン末期患者やひきこもりなどにも対象が広がってきている。海外でも一定の評価を受けている。不安神経症の仕組みを理解するうえでは非常に優れている印象。当初は臥辱療法と呼ばれる1週間ぐらいほとんど何もしない入院療法だったが、現在は外来療法が主流。日記療法などもある。また、当事者団体として、生活の発見会と呼ばれる自助グループが日本全国ほぼ各都道府県にあり、多数の精神科医の後援や連携等もある。定期的に集団会を開催して当事者、克服者などが集まっている。自助会としては組織の歴史、信頼性、規模とも日本有数のものだが、年齢層が高齢化しており、会員数の維持が課題となっている。
20世紀初頭にアルフレッド・アドラーによって創始された心理学。現在ある数多くの心理療法が何らかの理論的影響を受けている。勇気づけの心理学と呼ばれ、基本的に過去は問わず未来志向・目的志向である事が特徴。また、精神内界よりも対人関係論や目的論を重視し、共同体感覚という価値観を心理学に持ち込んだ。子育て、学校教育、夫婦関係、職場での人間関係等、対象は幅広い。ここ数年でメディア等に上ることが多く、広がりを見せている。
学習理論をベースにした心理療法で、パブロフの犬に見られるようなレスポンデント条件付け(条件反射療法)や、ギャンブルにはまる心理機制を典型的に示しているオペラント条件付けなどによる技法がある。精神分析のような原因探求的なものや、来談者中心療法のような受容的支持療法などとは一線を画し、ある種、機械的とも言えるような訓練技法とも言える。系統的脱感作技法、エクスポージャー、トークンエコノミー等様々な技法があり精神医療の範囲にとどまらず、発達障害児教育等にもその有効性が示されている。筆者の主観ではあるが、強迫性障害などの不安障害に効果的な印象。
20世紀最大の天才心理療法家とも呼ばれるミルトン・エリクソンの心理療法からの影響が大きい心理療法。スティーブ・ド・シェーザーやインスー・キム・バーグなどの実践的研究により理論の体系化が図られた。いかにブリーフ(短期)にセラピーを終わらせるかということを主題に、クライエントへの効果を第一とする。フロイトによる精神分析療法が原因の考察に視点を当てたのに対し、過去は問わず未来の解決に視点を当てる療法。その意味ではアドラー心理学との類似性がある。ミラクルクエスチョン、コ―ピングクエスチョン、例外の質問等、効果的な質問が特徴的である。
今日はとりあえずここまでです。
次回、各種心理療法パート2ということで、ご紹介いたします。