おととしまで障害者の就労支援の仕事に携わっていました。

そういった絡みで、精神疾患を抱えている方などのカウンセリングを安価でやっています。

そういった方々の悩みをお聞きするとやはり働くことについてのご相談がしばしばあります。

あれ?デジャビュー?
どっかで見たことある光景というか、前の仕事と同じような?

まぁ、そうはいっても役割が違うからソーシャルワークのような具体的な支援はしませんけど、考え方の整理や情報提供等をすることは多々あります。

先日は、知り合いのカウンセラーから精神疾患を抱えている方が働くことで悩まれているということで、どうしたら良いかとの相談を受けました。

ジョブコーチや各市区町村の支援機関、障害者職業センターやハローワーク等の役割や内容を説明し、どこに相談してどのように進めていけば良いかなどお伝えしたところ、是非こういったことをカウンセラー向けに講座してほしいとのことでした。

たしかに心理カウンセラーは心の相談を受ける中で、働くことについてのご相談を受けることは多々あるでしょう。

けれど、デイケアや作業所等のおおまかなイメージしか持っていないでしょう。

そうなると、ご相談も具体性が弱まるに違いありません。

障碍者手帳を持っていないけれど、グレーゾーンで就労がなかなか続かない方、家庭状況が大変でそれによって本人のメンタル面も多大な影響が出る方。

はっきり言って、本人の「働く」をきちんと援助しようとする時、カウンセリングだけでは済まないことが多々あります。

実際のケースワーク、ソーシャルワークといった支援が必要になります。

住居、障害者年金、失業手当、障碍者手帳取得、金銭管理、通院等々、メンタル以外でも様々なことがあります。

だから連携連携と盛んに言われるわけです。

そして、そういった環境が整って初めて、就労に向けて活動できるといったこともあります。

障害者就労で言われる鉄板的な言葉があります。
それは就労準備性という言葉です。

高齢・障害者雇用支援機構という団体の就業支援ハンドブックというものにも記載されているものです。

私は、働きたい!という障害者の方々、特に精神疾患をお持ちの方々にこの図を基に、うん百回お伝えしてきました。

ピラミッドの上から下へと順に追って説明していきます。

私はよくイチローを例えに出しました。

一般に就労するにあたって、自分にその仕事をやれる能力というものがあるかどうか考えるものです。

イチローが大リーグで働けているのは、そのバッティングセンスのみならず守備など、能力が秀でているからです。

ところが仮にイチローが監督や同僚とうまくいかなかったらどうなるか?

そうなると、この図の最上位にある職業適性~いわゆる能力があっても試合に起用されないかもしれない。

また仮に、監督や同僚とうまくいったとしても、遅刻したり、寝坊したり、グローブ忘れたりして基本的労働習慣を身に着けていなかったとしたら、そもそもメンバーに起用されないかもしれない。

さらに言うならば、それ以前に自分の体調管理、夜寝るのが遅かったり、薬飲み忘れたり、お風呂入らなかったり、水分補給しなかったり、そういったことができなかったとしたらたとえイチローほどの能力を持ってる人ですら活躍できないんですと。

だから何よりも日常生活の管理や体調の維持管理、そういったものが大事なんですと。

だから、まずは週4日あるいは週5日通えるだけの体力を作りましょう、みたいな流れでお伝えしていきます。

と言いつつも、私は若干疑問に思っていました。

本当にそれでいいの?

私が支援するにあたって一番苦労したのは在宅就労、あるいは週4日週5日通えない方々へのニッチな就職先です。

週1日たった1時間の仕事、週2日2時間の仕事、あるいは在宅で出来る単純な入力の仕事等々。

こういった就労先が本当に少ないんですね。
けれど、実はニーズは相当なもののはず。

需要と供給に大きなギャップがあります。
社会の受け皿がまだ追いついていないんです。

しかし、時代は変わってきています。

これからの時代は、会社や職場に自分を合わせていた時代から、自分の人生の働き方に会社や職場を合わせていく時代になっていくでしょう。

いや、というより、既存の就労支援の発想を変えていく必要があるように思うのです。

これだけSNSなどのネット環境が発展してきて、例えばZOOMやスカイプ、あるいは自分のスキルを切り売りするマッチングサイト、アフィリエイト等々、いろんなやり方がありうる中で、はたして週4日朝から晩まで働けるだけの体力を作りましょうという発想だけで良いのかどうか?

それができないから彼ら彼女らは苦しんでいるんです。

「働く」という働ける方にとっては当たり前の、しかし彼ら彼女らにとっては蜘蛛の糸をつかむかのような。

私は本当に多様な働き方がありじゃないかと思うんですね。

強迫性障害で一歩も家を出られない、あるいは統合失調症の幻聴に悩み一歩も外に出られない、たまに出るのはコンビニだけ。

そういった方々が徹底的にひきこもりながら働く方法。

私は、案外短絡的なので、発想を豊かに何でもありで考えればいろんな働き方ができるはず!なんて思ってしまうのです。

今読んでいる本で、吃音(どもり)に悩まれている方々が、なかなか就労が難しく、かつ制度の狭間にあるようで公的支援が行き届かないようで、そういった方向けの就労支援が言友会という当事者会であることを知りました。

おそらくは制度外の就労支援でしょうから、実際問題難しいでしょう。

と言いつつも、正直、吃音の方の就労支援は何とかなるに違いないなんて思ってしまいます。

吃音への理解とフォロー、そして心理的安全性が確保できるかどうか、それだけ。

だって、吃音と能力は関係ないのですから、そこさえ確保できればそれぞれ個々の能力を発揮するでしょう。

だから私の事業が繁盛したら、そういったハンディキャップを持った方々に手伝ってもらえないかなーなんて思ってる今日この頃です。

吃音の方や社交不安症の方なんて、私の所で働ければ一挙両得です。

だって、仕事しながら自分自身の症状改善についても間違いなくアドバイス受けられるのですから。

お金もらいながら治療するようなものです。

まぁ、吃音等に限らず、一応、障害者就労の支援者としてやってきたのですから、自分で事業をやっている以上はいずれはやらないと申し訳立ちません。

そのためにも早く事業を安定させて雇用できるだけの体力を付けないとです。


※カウンセラーやキャリコン、保健師、人事担当者向けに、「障害者の働く相談」、「クライエントから就労の相談を受けた時どうすれば良いか」「企業内メンタルヘルスについて」等の講座ご要望ありましたら承ります。ご相談ください。

【就労関係講座実績】

埼玉県庁様
「病気の治療と仕事の両立~病気を抱えながら働く従業員への支援」

社会保険労務士会あさか支部様
「病気治療と仕事両立」

企業内キャリアコンサルティング勉強会様
「企業内で精神疾患を抱えた方の支援」