言えない感情を代わりに語る

自分の感情にフタをするタイプの人からしばしば相談を受けます。

自分の感情、特に、苦しいとか、腹が立つとか、悲しいとか、辛いとか、そういった負の感情をあえて自分の中に閉じ込めてフタをします。

時に自分でも気づかずしてフタをしている人も多いです。

本当は悲しいはずであろうに笑顔で返す。
本当は苦しいのに平気を装う。
本当は傷ついているのに大丈夫と言う。

一体何のために?
理由は様々でしょう。

ある人は人とぶつからないように、ある人は目立たないように、ある人はいい子でいるために。

その目的のために、本当の自分の思いを封じます。

仕事柄、そういった人に数多く出会ってきました。
そういった人たちは、おしなべて皆、生き辛さを抱えています。

感情にフタをすることがどれほど自分を傷つけることであるか。
そういったことをまざまざと見てきました。

それが習慣となり、過剰になるとどうなるのでしょうか?

多いのが、体に出るようになります。
身体言語と言いますが、体は心の代弁者なのです。
自分が言えない、言わない感情を身体が代わりに言うのです。

腹痛や下痢、頭痛などで、もう行きたくないと代弁したり、あるいはもう無理なんですとうつになることで体を休めようとすることもあるでしょう。

会社でメンタルがやられて、身体症状が出始めた時は時すでに遅しと判断した方がいいでしょう。

その前の段階で何らかのサインは必ず出ます。

その時に拾って対応しておかないと休職せざるを得ないようになってしまうかもしれません。

他に、感情にフタをし過ぎるとどうなるのでしょうか?

例えば夢で表現されるようになります。

夢分析はフロイトからユング等、いろいろあるのでしょうが、私が知っているのはアドラー心理学の夢分析です。

アドラー心理学の夢分析では、夢は感情の代弁者と考えます。

現実生活の行動を促進するかのように、夢の中で恐怖、焦り、不安などを発動させるのです。

すると、例えば焦りの夢だとしたら、起きた時に夢の中身は忘れていたとしても、焦りの感情は余韻を残しているため、何か落ち着かないような焦燥感などを感じてそわそわとしてしまうのです。そうして行動を促します。

あるいは、恐怖の夢だとしたら、自分を取り巻く世界で何か危険なことが起こるかもしれないから警戒せよ!といったような思考が、無意識レベルで発生します。

すると、例えば外出した時に、なぜかは知らないけどビクビクした気持ちになります。

すると危機に対応できるようになるのです。
本当に危機なのかどうかは置いておいて。

感情のフタを外す

感情はまるで生き物のようです。
適切に処遇しないと、こうして自分を変身させてまで表出するようになります。

あるいは、心の容器に感情を詰め込み過ぎてフタをすると、パンパンになってあまりに苦しくなります。

それはまるで、嘔吐したいのに無理やり口を閉じて抑え込んでいるようなものです。

なので、押し込められた感情はけ口を求めるようになります。
けれど、頑なに閉じ込めます。

自傷行為とはそれが行き過ぎた結果なのでしょう。はけ口を求め、だからリストカットなどで体を傷つけるのです。

あるいは、アルコール、薬物等に救いを求めます。

あるいは、ネットで他者を攻撃することで自分の行き場のない感情をぶつけてスッキリしようとします。

けれど、表面上はさももっともらしく、自分こそが世界で一番正しい人間であるかのように振舞いながら。

自傷も、アルコールや薬物も、他者攻撃(ディスる)のも、その人なりの動機で見れは善です。自分の抑えきれない感情を何とかしようという意味で。だから手段の過ちなんですね。

自傷はアピールという人がいます。
そういう人もいるでしょう。

しかし、決してそれだけではありません。それは、自分のはち切れそうな感情を何とかしようと、本人なりの自らを救おうとする行為なのです。

自傷によって彼ら彼女らは今のこの生き辛さをかろうじて生き延びているのです。

あるいは解離と言うのですが、現実世界と自分を分断させ、精神的なダメージを直に食らわないようにします。

あるいは、もう自分の人格がこれ以上もたなくなってしまったら、多重人格になって自分を守ろうとします。

また、人によっては最終手段として、これ以上の生き辛さを味わないために自ら死を選ぶ人もいるでしょう。

言いたいことは一点です。

感情のフタを封印することなく、時に外していく習慣を身に付けましょうということです。

いきなりカパッと全開は難しいでしょう。

また、トラウマ的な感情はフタを開けることが時にリスクになるかもしれません。

今からでもいいです。
少しずつ少しずつそれをやっていく。

フタの外し方は様々です。
まずは感情に気づくことが大事です。
感情に気づかない人が多いですから。

あるいは、感情を書いてみる、つぶやいてみる、感情を打ち明けてみる、感情を伝えてみる。

そういったことでやれそうな小さなことから始めていくことです。

感情は生ものです。
感情は表現することで流れていきます。
感情は溜めるものではなく消化するものなのです。

(参考記事)
うつ病の初期症状と経過~うつは身体症状からやってくる!