カラセックの仕事の要求度ーコントロールー支援モデル

今日は組織のメンタルヘルスとモチベーションについてお話していきます。

カラセックの仕事の要求度ーコントロールー支援モデルというものがあります。

これは国際的にも標準的なツールとして使われているもので、非常に分かりやすいものです。


職場で高ストレスなのは、裁量がなくて大変な仕事であるということをこの図は示しています。

要は自分にはとてもこなせない、できないという状態ですね。

たとえ、とんでもない量や負担のある仕事でも、自分に裁量があれば、ストレスは自分を蝕むストレスではなく自分を活性化させるストレス~やる気に繋がります。

私は今、サラリーマンを辞めて開業したので、このことが実感としてよく分かります。

世間で言うブラック企業の状態は、完全に裁量が与えられている個人事業主や経営者において、その実感を持っている人は果たしてどれだけいるのでしょうか?

また、一方で、低ストレスなのは仕事が楽だからということに限りません。

仕事が大変でも、ほどほどの量と裁量を与えられてる仕事であればストレスは軽減するでしょう。

更には、もっと大変な仕事でも自分が楽しいと思えるような仕事だったとしたら、おそらくはストレスにならないに違いありません。この辺りになると、心理学者のチクセントミハイの言う、フロー状態に近いでしょう。

(参考記事)「チクセントミハイ~フロー体験で本当の自分を生きる心理学」

 

(参考図書)

カラセックは自分に裁量―コントロール感があるかどうかでストレスは変わり得るということを分かりやすく説明したのでした。

これは私たちに様々な示唆を与えます。

政府は働き方改革を現在進めています。

残業を減らす方向性になっているのは望ましいことですし、今後もこの方向性を維持していく必要性がある一方、実際には繁忙期と閑散期の落差がある職種などでは、かえって国の施策によって支障をきたすこともあるかもしれません。

単に仕事量の増減という発想だけでなく裁量という観点を取り入れることで、ストレスマネジメントや職場のメンタルヘルス対策だけでなく、仕事の生産性にも良い影響を与えることもるでしょう。

やらされ仕事より、自分ができる、やれるという感覚の方が、たいていの人はやりがいを感じるのではないでしょうか。

モチベーションアップの秘訣はソーヤー効果にあり?

私がよく講演や講座などで使わせてもらっている本で、クリントン政権のゴア副大統領の首席スピーチライターを務めたダニエル・ピンクの書籍「モチベーション3.0」に「ソーヤー効果」という言葉が出てきます。

トム・ソーヤーの冒険のエピソードで、トムがおばさんの家のペンキ塗りを命じられてうんざりしてやっているところに、向こうから来た友達が脇を通り過ぎていく時、気の毒にとバカにされます。

けれど、トムはいやいやそんなことないよ、こんな面白いことやめらんないわといった感じで、超楽しそうな様子でペンキ塗りをします。

するとどうしたことか、友達は俺にもやらせてよとなり、トムはいやいやこんな面白いこと渡せないねと。

すると友達はリンゴやるからさ~と頼み込みます。トムはしょうがないなぁ~なんて言いながら友達がペンキ塗っているのをのんびり休みながら見ていて、そして次に来た友達もその手で絡めてしまいます。

そうして自分はほとんど労力掛けることなくペンキ塗りの仕事を終えてしまったのです。

恐るべしトム。
将来はいったい何者になることか。

こうして、おばさんに命令されたやりたくもない苦痛なペンキ塗りの仕事が、トムの策略で金払ってもいいからやらせてくれとなる。

いったい仕事とは何なのでしょうか。
意識の持ち方でこうも変わる。

まさに、やらされ感と裁量もしくは自己コントロール感との違いではないでしょうか?

そのために会社側が従業員側にできることとしては、例えば仕事を任せることなのかもしれませんし、裁量を与えることかもしれません。

会社側が社員の生産性を上げるためには、そういった自己効力感を上げる取組が必要と言えるでしょう。

そしてもう一つ、この表のストレスの程度に影響を与えるものとして上げられるものが、周囲からの支援です。

上司、同僚の応援があれば、同じ大変な仕事でもストレスを低減してやっていけるのです。

うつで休職するか否かの境目は、正にこの辺りにあるとも言えるのではないでしょうか。

うつで休職する人の多くは、人に頼れない状況にあったり、頼むことができない性格だったりして、孤立している人が多いのではないでしょうか。

最も生産性の高いチームの要素とは?

こういったことから、やはりいつも思うのが、2012年にGoogleが社内で行ったプロジェクト・アリストテレスという実験です。

社内に様々なプロジェクトチームがある中で、最も生産性の高いチームの要素は何か?という実験です。

 

何だと思いますか?

 

チームの能力、経験、給料、知識、知恵、コミュニケーション力、等々の様々な要素からGoogleがついに発見したキーワード、それが以下です。

 

「心理的安全性」

それは、自分が所属している場所で安心安全が保障されている状態。
何を言っても自分は否定されないと思える状態。
周囲の人を信頼できる状態。

自己受容・他者信頼・他者貢献というアドラー心理学の言葉も思い出されます。

アドラーの言う、「共同体感覚」とは、正にこの心理的安全性が担保された状態なのかもしれません。

結局は、私たちが小さい頃から良く聞いてきた「友情」、「信頼」、「勇気」といったシンプルな言葉の中に答えがあるのかもしれませんね。